2023年03月30日

放射線副読本ニュース

星川まり(東京・社会運動部)です。


 


先日お知らせした、放射線教育政府交渉、地球救出アクション97稲岡美奈子さんからご報告をいただきました。


 


<共有>


 


2023年3月27日原子力教育、放射線教育政府交渉 速報


 


 


 原子力委員会が決定し、2月28日に閣議決定された「原子力利用に関する基本的考え方」の以下の部分を中心に、放射線副読本、放射線教育「出前授業」「教職員研修」等も含めて、原子力委員会と文科省と討論しました。


初等中等教育段階においては、既に放射線副読本やエネルギー副読本などが配布されているほか、日本原子力学会によって、教科書での原子力に関する記載に対する提言も行われるなど、放射線やエネルギーに関する理解を深める取り組みが進められている。今後はこれらの取り組みを通じた原子力・放射線教育の一層の充実が期待される。


 さらに、GX関連の2つの法案「GX推進法案」「GX脱炭素電源法案(束ね法案)」(原子力基本法改正を含む)が国会で審議に入っていることから、法案の内容についても議論しました。


 予定していなかったことですが、束ね法案の中でも重要な「原子力基本法」改悪について、原子力委員会と議論できました。この部分に注目ください。反対運動を早く大きくしなければなりません。


 文科省は変わらずのガードの堅さでした。今回の重要な問題は、原子力学会の学校教育への不当な介入とそれを原子力委員会が推奨し(内閣が承認)、文科省が容認したことです。広く知らせると共に、見張りを続けます。


 全国37団体から賛同いただき、15人で討論を行うことができました。まとめ速報版を送ります。


YouTubeは、時間を間違えて撮影できませんでした。文字でやってみますので、お許しください。


 


原子力委員会


出席:委員会事務局参事官(原子力担当)進藤和橙さん、参事官付主査松井信衛さん、伊藤俊吾さん


 


質問書への回答  


<原子力に偏った教育推進を「期待する」のは不適切。原子力学会が文科省、教科書会社に圧力をかけるのを原子力委員会が期待するのは不適切、撤回せよ>に対して、


進藤:「教科書の事実誤認を改めてもらうという意味である。こういった、原子力学会の活動は非常に重要だ。その結果、教科書に、エネルギーそれぞれバランス良く記載されている。放射線副読本にもバランス良く書かれている」


 


<国会に提出された束ね法案の、原子力基本法の目的に「温暖化防止」を入れ、原子力利用に国が責任を持つこと等が異常に詳しく書かれているのは不適>に対して、


伊藤:温暖化対策をエネルギーだけでなく経済構想に変えていこうというものである。温暖化対策やロシアのウクライナ侵攻の影響を受けたエネルギー安定供給等を検討した結果である。2月28日の「原子力利用に関する基本的考え方」の閣議決定というのは、政府として「基本的考え方」を尊重するというものである。「基本的考え方」に、この内容を「法律として制定することが望ましい」との一文があることから「原子力基本法改正」(束ね法案に含む)が出されたのである。


 


討論 私たちの側の発言は○、政府側は発言者の名前、( )内は、まとめた人の意見。


教科書・文科省への圧力に関して<原子力学会の教科書への圧力は「いけないこと」と伝えることはできた>


○原子力学会はひとつの民間団体に過ぎない。検定を通った教科書に対して、内容に介入する膨大な報告書を提出し、文科省、教科書会社に圧力をかける。原子力委員会がこれを評価するのは問題だ。


進藤:検定に類するものではない。教科書会社が採用するかどうか会社の判断。間違いについては、その後(教科書が)訂正されたと学会から聞いている。有意義なものと考える。


○福島事故の原因を津波の影響と書けとある。国会事故調でも、地震の揺れの影響を否定できないとしている。おかしいではないか。原子力学会とどういう関係か?


進藤:原子力学会と特別な関係はない。会員になっている委員はいる。


○放射線副読本には放射能の危険性を正しく書いてない。放射線が役に立つことを強調している。


進藤:役に立つということだけを書いている訳ではない。


○原子力学会は原子力推進にバイアスがかかっている。原子力委員会はどう評価しているのか。


進藤:放射線副読本、エネルギー副読本については一定の中立性が担保されている。教科書は、客観的に判断した上で事実誤認を指摘している。バランスは取れている。


○LNTモデルはICRPも認めており、低線量でも被害はある。どうか。


進藤:無用な被ばくを避けることは重要と考えている。被ばくを少なくすることが大切と書いてある。


○「基本的考え方」に対するパブコメの結果を教えてください。


進藤:2300件。人数とは言えない。理由は、1回提出の中に3つ意見を書ける。送った回数が2300回ということ。賛成、反対が何件かは言えない。分類できないため。


 


原子力基本法改定法案に関して <このひどい法案、原子力委員会が作ったのではないようだ>


○原子力基本法改定案はひどい。基本法に国が責任を持って原発推進することを細かく書き込んでいる。以前、原子力委員会にいた鈴木達二郎さんも「やってはいけない」と行っている。ウクライナの戦争が終わり、エネルギー情勢が変わると、また書き直すのか。原子力利用の憲法と言える基本法だ。


伊藤:中長期的に考えて政府が法案を提出した。国会で審議されるので、そこで説明していきたい。


○改定案は誰が考えたのか?原子力委員会は、法案は議論していないのか?


伊藤:原子力委員会の「基本的考え方」を踏まえて法案が作られた。


○「基本的考え方」と法案の間にはものすごいギャップがある。つまり、パブコメに出されなかったことが法案に書いてある。誰が法案を書いたのか?高市大臣か?


進藤:原子力基本法は内閣が担当している。その責任者は高市大臣だ。


○基本法に書く必要のないことが書かれている。パブコメの内容とかけ離れている。


伊藤:法律だからパブコメにかける必要はない。国会で審議する。


○あれで良いのか?


進藤:政府として提出したので、これから国会で審議する。


○国の責務を並べているが、福島事故への国の責任を認めているのか。今は、事業者の責任としているが、これからは国の責任か?


進藤:事故責任について内閣府としては関わっていない。制度全般は国がやっており、損害賠償も改善している。


○原子力に関する政策大綱を国が作っていたが、その委員会は原発推進派ばかりだった。


○立地地域の説得に、国が当たると書いてある。許されるのか。


○法案を今回は流して、考え直してください。


 


文科省


出席(敬称略)


初等中等教育局教育課程課 専門職        麻田 卓哉


  初等中等教育局教育課程課 教育課程総括係長 齋藤 紫乃


  初等中等教育局教科書課 教科書検定調査専門官 池田 真信


  研究開発局環境エネルギー課 課長補佐     田村 嘉章


  研究開発局原子力課立地地域対策室長      酒匂 義弘(当日、欠席)


  研究開発局原子力課立地地域対策室専門官    高橋 大吾


  総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課


   消費者教育推進係長(併)環境教育推進係長    松尾 雄樹


  スポーツ庁政策課企画調整室学校体育指導係


(併)保健教育係係長              岸 洋平


 


原子力委員会「基本的考え方」(教育への介入)への文科省の対応・意見 質問書への回答 


文科省は原子力学会の活動を見ないふり、教科書会社への圧力も対応は会社の自由と見ないふり


○原子力学会の教科書に対する提言の扱いは?(○は私たちの質問、発言)


麻田:そのような提言に関しては、随時文科省の幹部に渡され、その都度、担当課へ渡される。


○その提言は学習指導要領に反映されたか?


麻田:平成30年度の改訂で、中学2年生の理科、「電流と利用」の「取り扱い」で「真空放電と関連付けて放射線を扱う」と新たに書かれた。また、現代的諸課題、教科横断的分野に「放射線教育」が入れられた。


○それは福島事故に対応するためか?


麻田:東日本大震災や熊本地震災害等の困難な時代に社会を形成する生徒を育てる。放射線の正しい知識と理解を形成するもの。(熊本を付け加え、決して福島事故と言わない)


○2013年度から放射線教育の担当部署が初等中等局に代わった理由、経過は?


麻田:放射線副読本に関するH20年6月の行政事業レビュー公開プロセスにおいて、担当部局が原発推進の研究開発局、予算がエネルギー特会では国民の理解が得られないと判定され、文科省内で改めて検討し、初等中等教育局教育課程課が担当することになった。(経過を聞いたのは初めて)


高橋:移管前は「原子力教育支援事業」(これは間違い。この時点では「原子力・エネルギー教育」に変更されていた)であった。


○原子力学会は教科書改訂ごとに教科書を全部点検し、文科省に申し入れを行っている(26年間)。教科書検定に影響を与えたか?


池田:提言を踏まえて、教科書の表現を変えるようなことは求めていない。


○「基本的考え方」によると、原子力委員会は「放射線副読本」を原子力推進の手段と捉えているようだが、文科省は副読本の目的をどのように考えているのか。


麻田:福島事故に伴う避難でいじめが生じた。学校へ通達を出したり、スクールカウンセラーをおいたり対策を行ったが、放射線に対する科学的知識が重要と考え、教育委員会に放射線教育を求めた。(「事故を継承し、事故を起こさない教育を行うべき」というこちらに問いかけには答えない)


○現行「放射線副読本」は復興を強調し、汚染水海洋放出を認めさせる記述だ。


麻田:有識者・専門家の意見を聞き、科学的根拠に基づき作った。(この部分、討論で問題にした)


○再エネではなく、原子力教育だけに力を入れるのは不適切。


田村:「GX実現に向けた基本方針」にキャリアアップも書いてある。(?)


 


討論


○「原子力利用に関する基本的考え方」の中で、任意団体の一つに過ぎない原子力学会の活動を原子力委員会が公的文書で取り上げ、(高く)評価している。文科省はどう考えるのか?


麻田:コメントを差し控える。この提言と関係なく検定を行っている。


○影響ないと言うが、効果があるからやっているのではないか?公平性の担保は何か?教科書の多様性の保障は?


麻田:(答えず)


○放射線副読本、放射線教育は福島のためか?子どもたちを放射線から守るとか、いじめから守るとかか?


麻田:科学的理解だ。放射線理解を深める。(決して、福島のためと言わない!)


○放射線は低線量でも被害があることを教えないと、避難者へのいじめが止まらない。放射線はエネルギーが高いのでDNA二重鎖を切断し、被害が起こる。放射線に注意深くすることを教えなければ子どもの未来を奪う。安全量はないことを教えるべき。


麻田:専門家の意見を聞いている。


○偏った専門家ではないか。専門家とは誰だ。選定の仕方を示せ。


麻田:公開できない。


○まちがっていないか、検証せよ。


麻田:(答えない)変える気はない。


○最近は教科書でも賛否両論を書くようになっている。批判的学習を文科省は勧めているのではないか。


麻田:科学的知識だ。


○放射線副読本に同封して一方的に海洋放出を良いとするビラが学校へ送られた。非常に不評だった。副読本の海洋放出の記述も同様だ。政府の方針を伝えるだけのものになっている。


麻田:有識者、専門家の意見に従った。個別回答できない。専門家の選び方は公開していない。


○原子力委員会は「原子力・放射線教育」に期待しているが、文科省は期待に応えるのか?


麻田:原子力委員会に聞いてください。


 


環境・エネルギー教育について 質問書に答えて


(質問が整理されておらず、文科省がまだ対応できていないようで、かみ合わない質疑でした。)


○文科省は「GX実現に向けた基本方針」をどのように捉えているのか?


文科省:カーボンプライシングが書かれている。それに協力する。(?)


○原子力教育ではなく、気候・エネルギー教育を行うべき。


麻田:環境教育でやっている。


○気候・エネルギー教育に予算を付けよ。


松尾:消費者教育でSDGs、持続可能な社会の実現という事業を行っている。


○公平な情報を与えるデータバンクを作れ。


麻田:一人1台持っているパソコンで検索できるので、気象庁ホームページからからIPCC報告もとることができる。中学理科の自然環境の保全で教えることができる。


(社会の急激な変化に対応しようという姿勢は感じられない)


文科省との話し合いを終えて


科学的知識を児童生徒に与えれば、いじめや汚染水海洋放出反対は起こらないという態度です。科学的知識とは文科省が選んだ専門家であって、選び方は公開していない。私たちがチェックすると文科省は原子力ムラに偏った専門家ばかり選んでいます。つまり「科学的知識」がゆがめられているのです。去年の話し合いよりも話がすっきりしたようです。福島事故はなかったことにし、政府が原発推進に舵を切ったことの影響でしょうか。


偏った科学的知識を与えるのではなく、子どもたちが自分たちで調べ、考え、討論し、結論を得る。そして、実践する。文科省はこのような教育を目指しているはずで、アクティブラーニングを推奨していますが、文科省の答弁内容は偏った「知識」で政府の方針を支持する教育を行っていると感じられました。


私たちは、今後も文科省「(原子力)・放射線教育」を見張ります。政府、原子力委員会、原子力学会の行動も見張ります。


 


質問書賛同団体(順不同)


道民視察団(北海道原子力防災雛訓練道民視察団、ベクレルフリー北海道、脱原発ネット釧路、福島県教職員組合、エネルギーのいまを考える会、奈良脱原発ネットワーク、道民視察団(北海道原子力防災雛訓練道民視察団)、今を生きる会、ふぇみん婦人民主クラブ、反戦タイガーズ兵庫、緑の党グリーンズジャパン、川内原発建設反対連絡協議会、公平な放射線教育を考える会@しずおか市民電力連絡会、サヨナラ原発福井ネットワーク、原子力教育を考える会、オルター、放射線被ばくを学習する会、日本山妙法寺 、原発止めよう!九電本店前ひろば、うちなんちゅの怒りとともに!三多摩市民の会、横田行動実行委員会、ヒロシマ•エネルギー•環境研究室、ヒロシマ•エネルギー•環境研究室、原発廃炉金属の再利用を監視する市民の会、日野市の今と未来を考える会、原発さよなら四国ネットワーク、安全なふる里を大切にする会、国際女性年連帯委員会、科学技術問題研究会、原発の危険性を考える宝塚の会、ヒバク反対キャンペーン、原発はごめんだヒロシマ市民の会、核のごみキャンペーン関西、高木学校、関西よつ葉連絡会、グリーン・アクション


 

posted by だつげんぱつ at 10:53| 脱原発情報[情報]

2023年03月29日

本日、衆・経産委で「GX推進法案」可決/FoE声明発出/明日、いよいよ衆本会議で「GX脱炭素電源法案」(原発束ね法案)」趣旨説明、質疑 ほか

星川まり(東京・社会運動部)です。


 


<転送>


みなさま(重複失礼、拡散歓迎)


FoE Japanの満田です。長いメールで失礼します。


1.GX推進法案、衆・経産委で可決
2.昨日の院内集会「原発GX関連法案の廃案を求める集会」資料および録画映像をアップしました。
https://foejapan.org/issue/20230316/11958/
3.FoE Japan声明「原子力と大規模排出事業者への不透明な資金の流れをつくりだす『GX推進法案』に反対する」
https://foejapan.org/issue/20230329/12103/


1.GX推進法案、衆・経産委で可決
残念ながら、今朝、GX推進法案は衆議院の経産委員会で可決されてしまいま
した。立憲、共産は反対、自民、公明、維新、国民が賛成。
(社民、れいわは経産委員会の委員には入っていません)
明日くらいに衆院本会議にかかるでしょう。その後、参議院へ。
そしていよいよ、明日「GX脱炭素電源法案」が衆院本会議にかかります。すでに議論は衆議院経済産業委員会えはじまっています。


経産委員会では、立民の山崎誠議員、共産の笠井あきら議員が「GX推進法案」の
反対討論を行いました。
山崎議員は、GXの推進自体は重要としつつも、「経済産業省がGXをしきっており、
白紙委任になってしまう。高温ガス炉などにGX債のお金がいってしまう。地域の
声、地方自治体の声を受ける仕組みがない」などを理由に反対としました。
笠井議員は、「GXの内容が、原発回帰と石炭火力延命となっている。GHG排出削
減を先送りする。GX移行債を発行し、原発や石炭火力に投資する国は世界のどこ
にもない」などの理由で反対としました。


午後の経産委では、再エネなどに関しての議論されましたが、さまざまな重要な
問題提起がありました。
米山隆一議員の質疑で、ふたたびGX推進法案について鋭い問題提起がありました。


・GX推進法、GX債による政府資金の行先に「次世代革新炉」がある。革新軽水炉
というが三菱重工の資料を見る限り、どこを見ても「次世代」でも「革新」でもない。
・SMR(小型モジュール炉)も対象になるのだろうが、原子炉は効率性を求めて
大型化した。どこにでも置けるというのが売り言葉だが、日本の原子炉の置き場
所は、既存の原発の敷地内しかありえない。実証試験をやる場所もない。
・20兆円のうちのいくらくらいが原発にあてられるのか不明。
GX移行債全体についてぼやっとしていてよくわからない。
これから人口が減るのに、重い負担になって次世代にのしかかる。
超大型投資をするのに、毎年決めます、超大型金融調達するのに、毎年決めます…と。
住宅の省エネと大型炉の開発は、まるっきり違う話なのに、無理やりまとめている。
いままで経産省がやったことは死屍累々。
まっとうな制度設計がない。


運転期間についてもとても重要な提起がありました。明日にはアーカイブ映像が
アップされると思いますので、ぜひご覧ください。
https://www.shugiintv.go.jp/jp/


また、山崎誠議員は、GX債により「革新的技術」が支援されとしており、草の根
の従来型の技術をうまく活かした地方分散型の再エネが支援されないなどのこと
について追及されていました。


今も経産委員会は続いていて、今、笠井議員が資源エネ庁と原子力規制庁の癒着
について渾身の追及をしています。例の駅での文書のやりとりについて。
とても重要です。ぜひアーカイブ映像でご覧ください。
https://www.shugiintv.go.jp/jp/


2.昨日の院内集会「原発GX関連法案の廃案を求める集会」
約150人ものみなさんにご参加いただきました。
資料および録画映像をアップしました。
https://foejapan.org/issue/20230316/11958/
山崎誠議員、笠井あきら議員、岩渕友議員、福島みずほ議員、くしぶち万里議員
が参加されました。


3.FoE Japan声明「原子力と大規模排出事業者への不透明な資金の流れをつく
りだす『GX推進法案』に反対する」
https://foejapan.org/issue/20230329/12103/


本日、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」(以下、GX推進法案)が衆議院経済産業委員会で可決されました。同法案は、政府が定める「GX推進戦略」に基づき、脱炭素分野に150兆円規模の官民の投資を呼び込む
という内容で、20兆円もの「GX経済移行債」の発行や「GX推進機構」の設立が含まれています。私たちは以下の理由でGX推進法案に反対します。


1.原子力・大規模排出産業を長期にわたり官民資金で支援する
 2月10日、政府はGX基本方針を閣議決定しました。同方針には、原発の着実な再稼働やそのための理解醸成、次世代革新炉の開発・開発建設、人材育成、事業環境整備、核燃料サイクルの促進などが含まれます。また、水素・アンモニア、CCS、CCUSなどによる化石燃料発電の維持・推進を経済的に支援する内容となっています。「GX推進法案」はこのGX基本方針を実現するための法案です。
 今月末にも国会で審議入りが予想される「GX脱炭素電源法案(注1)」においては、原子力基本法の改正案に、原発を脱炭素電源として位置づけ、国の責務として活用していくことも盛り込まれています。「GX推進法案」と「GX脱炭素電源法案」は車の両輪の関係にあり、長期にわたって原子力産業を国が支援し続けることを法定化することになります。


2.経済産業省への白紙委任となる
 GX推進法案では、20兆円規模の「GX経済移行債」の発行、「GX推進機構」による金融支援や債務保証などにより、150兆円規模の官民のGX投資を生み出すとしていますが、その資金の行先は、政府が定めるGX推進戦略(第6条)に沿ったものとなります。「GX推進戦略」は経済産業省が案を作成し、閣議決定されます。すなわち、GX投資の対象は、経済産業省が決めることになります。
 また、民間企業のGX投資の支援や化石燃料賦課金・特定事業者負担金の徴収などを行う「GX推進機構」の設立が盛り込まれていますが(第5章)、これは経済産業大臣の認可法人です。業務計画、財務・会計などは、「経済産業省令」によって定められます。
 すなわち、GX推進法案によって生み出される官民の巨大なGXマネーの投資先や資金管理が、経済産業省に白紙委任されることになります。


3.脱炭素基準、環境・人権配慮基準の不在
 GX推進法案は「脱炭素」をかかげているのにもかかわらず、GX経済移行債の発行による政府支援、およびGX推進機構が支援を行う民間企業のGX投資の対象について、温室効果ガス削減効果に関する基準が設けられていません(注2)。すなわち、経済産業省が認めれば、脱炭素効果が見込めない分野・事業であっても、GX投資の対象になりえます。
 すでに閣議決定されたGX基本方針には、化石燃料由来の水素・アンモニア利用が含まれています。これは化石燃料の消費量を増やし、温室効果ガス排出増大をもたらすことになります。また、石炭火力を含め既存の火力発電の積極活用や延命とセットで進められています。これでは、パリ協定にかかげる1.5℃目標は達成できません。
 また、公的資金により投資や金融支援を進めていくのにもかかわらず、環境破壊や人権侵害を回避するための基準が設けられていません(注3)。


4.大規模排出事業者が受益、最終的には国民負担になりかねない
 GX推進法案は、大量の温室効果ガス排出を行っている企業ほど受益する内容となっています。その財源は、GX経済移行債などで賄われ、将来的に炭素賦課金や特定事業者負担金で回収されます。価格転嫁されれば、最終的には消費者、すなわち国民が広く負担することになりかねません。


5.資金の流れが不透明で、監視、検証ができない
 「GX経済移行債」で得られた資金の使途は、現段階では不明であり、具体的には経済産業省が決めていくことになります。また、化石燃料賦課金の徴収、「GX推進機構」に流れこむことになりますが、資金の流れが不透明です。国会(つまり国民)によるコントロール、監視、検証ができません。


6.国民の声が反映されていない
 GX推進法案に、国民の意見はまったく反映されていません。2月10日に閣議決定されたGX基本方針は、年末年始、30日間のパブリック・コメントに付されましたが、反対する意見は反映されず、各地で行われた説明・意見交換会で出た意見については、最初から反映しないものとして扱われています。国民の現在の生活や将来世代にかかわる重要な法案にもかかわらず、大企業の利益を代弁する有識者や産業界の声にばかり耳を傾け、国民の声をきくプロセスを踏まないことは、大きな問題です。
私たちは以上の理由から、「GX推進法案」に反対し、廃案を求めます。


注1)原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたもの。
注2)たとえばEUタクソノミーにおいては、エネルギー分野においては、太陽光・風力については閾値なし、水力・地熱に関してはライフサイクルにわたるGHG排出量が、1kWhあたり100g未満、運輸においては直接CO2排出がゼロ(移行段階の活動については1kmあたり直接CO2排出が2025までは50g未満)などと、具体的に定められている。
注3)EUタクソノミーは、気候変動の緩和、適応、水と海洋資源、循環型経済、環境汚染の防止と抑制、生物多様性などの環境分野の一つもしくは複数に貢献し、いずれの分野についても著しい害を及ぼさないこと、ビジネスと人権に関する指導原則など「最低限のセーフガード」を満たしていることなどとされている。


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満田夏花(みつた・かんな)
携帯:050-7103-6951
国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
TEL: 03-6909-5983  / FAX: 03-6909-5986

posted by だつげんぱつ at 17:17| 脱原発情報[情報]

2023年03月28日

【集まれ!参院会館前】3/28 大軍拡予算採決強行にNO!緊急座り込み&平野啓一郎さんのメッセージ

【集まれ!参院会館前】
3/28 大軍拡予算採決強行にNO!緊急座り込み&平野啓一郎さんのメッセージ
https://kosugihara.exblog.jp/241762570/

東京の杉原浩司(武器取引反対ネットワーク:NAJAT/STOP大軍拡アクション)
です。[転送・転載歓迎]

3200億円超のトマホーク導入費などを含む6兆8219億円の軍事費を盛り込んだ超
大軍拡予算案の成立が、いよいよ目前に迫りました。本日28日午前9〜12時に参
議院予算委員会で締め括り総括質疑の後、討論・採決され、14〜15時30分の本
会議に緊急上程。採決=成立が強行される流れです。

防衛力強化を盛り込んだ2023年度予算案があす成立へ(3月27日、テレ朝News)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000293027.html

静かに成立させるのは主権者の恥です。最大限の抗議の声を上げましょう。
万難を排して、ご参加、ご取材をお願いします。各地でも声を上げてください。
後半の平野啓一郎さんのメッセージもぜひご一読ください。

◆大好評につき在庫が減ってきました。ぜひご注文ください!
【最新パンフ】
<新たな「安保3文書」にもとづく2023年度大軍拡予算案を批判する!>発売中!
https://kosugihara.exblog.jp/241747158/

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<緊急行動 集まれ!参議院会館前>
戦争準備の大軍拡予算採決強行にNO!  
あたらしい戦前にさせないための座り込み

武器ローン代も含め10兆円を超える大軍拡予算を含む今年度予算案が、本日28
日に参議院予算委員会と本会議で採決され、成立が強行されようとしています。
最後まで私たちの反対の意思を示したく、緊急の行動を呼びかけます。可能な
時間帯で構いませんので、ぜひご参加ください。

日時:3月28日(火)12時〜15時30分
場所:参議院議員会館前(永田町駅1番出口)

※プラカードなど持参歓迎。可能な方は椅子をご持参ください。

<呼びかけ>
ふぇみん婦人民主クラブ TEL 03-3402-3244
STOP大軍拡アクション TEL 090-6185-4407
STOP改憲・北区の会 TEL 090-1266-8645

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<参考>
※ご報告が大幅に遅くなりましたが、「ミサイルではなく暮らしを! 大軍拡予
算組み替えを求める3.3院内集会」(主催:STOP大軍拡アクション、協力:平和
を求め軍拡を許さない女たちの会)で読み上げ、ご紹介した平野啓一郎さん
(作家)のメッセージです。
https://kosugihara.exblog.jp/241744354/

  ↓   ↓   ↓

憲法の平和主義の原則堅持を求める。
 
 政府は昨年末、所謂「安保3文書」によって、防衛費を5年間で総額43兆円まで
激増させ、憲法の専守防衛の基本原則に反する敵基地攻撃能力の保有を閣議決定
した。首相自らが、戦後の安保政策の大転換と主張しているが、にも拘わらず、
安倍政権以来の国会軽視は相変わらずで、立憲主義、国民主権は深刻な危機に瀕
している。各メディアが、この決定に至る防衛省内の検討会議の議事録を情報公
開請求したが、これも例によって黒塗りだった。
 首相は、昨年十二月十六日に、この安保3文書の閣議決定について記者会見を
行ったが、それは、日本の国防に関して、日米安全保障条約に一切触れることな
く、あたかも完全な自主防衛路線に舵を切ったかのような、極めて欺瞞的な内容
だった。
 賛否はあるにせよ、日本の安全保障政策は、日米安保条約に基づき、従来は専
守防衛の日本が「盾」であり、他国への攻撃はアメリカが「矛」として担うとさ
れてきた。在日米軍基地の存在を許容する唯一の理由がこれであったはずである。
 ところが、安倍政権以来、この前提は覆され、アメリカは日本に「矛」の役割
まで要求するようになっている。実質的な改憲であり、従って違憲である集団的
自衛権の行使容認の閣議決定から、今回の安保3文書に至るまで、日本政府が行
ってきたことは、中国に対して軍事的に優位に立とうとするアメリカの戦略への
完全な従属である。
 もし日本に中国からミサイルが飛んでくるとするならば、台湾問題以外になく、
標的は在日米軍基地である。更に日本が参戦すれば、それを理由に攻撃を受ける
こととなり、戦争は泥沼化する。一度戦争となれば、それを終わらせることがど
れほど困難かは、ロシア・ウクライナ戦争然り、火を見るよりも明らかである。
 他方、北朝鮮の核保有・ミサイル開発にせよ、それこそは、体制転覆のために
は軍事介入も辞さないアメリカの脅威に対する防衛戦略であり、決して賛同は出
来ないが、完全な安全保障のジレンマに陥っている。こうなると、日本にとって、
日米安保条約とは一体何なのか? そのリスクとメリットについての真面目な議
論が一切ない。
 十二月の記者会見で、首相は確かに、「外交的努力」の重要性を述べた。しか
し、聞き捨てならないのは、その直後に、「外交には裏づけとなる防衛力が必要」
とし、「防衛力の強化は外交に於ける説得力に繋がる」と訴えている点である。
この恐るべき短絡が、現政権の外交観である。外交には言うまでもなく、国際法
・国際関係・経済・文化・歴史的背景、人的交流、……と様々な要素が備わって
いる。その多様な要素が生かされれば生かされるほど、平和的共存のために一般
市民の参加の余地が開かれてゆく。しかし、軍事一辺倒となると、戦争のリスク
は政権に極端に集中する。
 この十年来の日本ほど、周辺諸国と関係を悪化させ、それを修復できない国も
珍しいが、その外交の失敗を、言うに事欠いて防衛力による「裏づけ」の欠如の
せいにするとは、言語道断である。政治家としての資質が問われるが、このよう
な理屈を、外務省の官僚は本当に納得しているのであろうか?
 そもそも、今回の防衛方針の転換によって、中国や北朝鮮といかなる外交が可
能になるのか、具体的展望は一切ない。当然だろう。まず、中国に対し、日本一
国の防衛力強化が十分な抑止力になるという根拠がない。従って、両国間の緊張
こそ増すものの、この結果により、中国と建設的な外交交渉が始まるという見込
みは何もない。戦力比較のみならず、日本は経済的にも中国に深く依存している。
30%台の食糧自給率については既に報じられているが、戦争となれば、経済制裁
を科しても科されても、先に干上がるのは、間違いなく日本である。
 他方、日米同盟ありきの防衛費増額と言うならば、中国が、アメリカ政府の小
さな支店のような日本政府と交渉する意味はない。つまり、日本は肝心の外交に
於いて、リスクの分散を図る、独自の多極的な選択の可能性を著しく低下させて
いるのである。
 日本が経済的にも文化的にも重要な国であり続け、平和主義を貫き、周辺諸国
と密接な利害関係を有しているならば、何故、戦争をする必要があるだろうか?
 政府は、日本がこれまで「平和国家」、経済大国として得てきた安全保障上の
利益を無視し、国内の経済政策に失敗し続けながら、ひたすら貧しい軍事大国へ
の道を突き進んでいる。
 対テロ戦争時、日本は国内でのテロを経験することなかったが、現役の防衛大
臣が防衛装備移転三原則の見直しに言及し、貧すれば鈍する式に、政府与党が軍
需産業振興に力を入れようとしている以上、将来、日本製の武器で大量の殺戮が
行われ、結果として国内でもテロを招いてしまうリスクがある。日本は倫理的に、
現実的に、本当にそのような国になって良いのか?
 安倍政権以降、安全保障政策とは、専ら「味方」作りを意味し、結果、対立は
煽られる一方だった。しかし、真の外交とは、利害関係が一致しない国とこそ交
渉を重ねることである。アメリカとの完全な軍事的一体化に国防を託すなどとい
うのは、政治的怠惰と無思慮の極みであり、そもそも国防でさえなく、日本の未
来の可能性を押し潰す愚行である。
 安倍政権時代の違憲の集団的自衛権行使容認にまで遡り、安保法制を見直し、
ここに至った極端な安全保障政策を今こそ見直すべきである。
 平和は外交によってしか実現され得ない。この事実を、文字通り、実行しなけ
ればならない。

 平野啓一郎
posted by だつげんぱつ at 00:40| 脱原発情報[情報]